展覧会Exhibition
竹中美幸 個展:陰と陽と
2022年2月4日(金)- 2月27日(日)
日程 | 2022年2月4日(金)- 2月27日(日) |
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営業時間 | 水~金 12:00 - 19:00 / 土日祝 11:00 - 17:00 |
休廊日 | 月曜、火曜 |
関連イベント | 第14回恵比寿映像祭(2022年2月4日—2月20日) 地域連携プログラム参加 https://www.yebizo.com/jp/program/56787 |
作家在廊 | 2月27日(日)13:00-17:00 |
また2020年には、岐阜県美術館で開催された「清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2020」にて篠原資明(高松市美術館館長)賞を受賞。映像用のフィルムという、いまや過去の遺物に追いやられつつある素材を用いて、光の痕跡と音の記憶を提示した作品《記憶の音》のその素材と手法による独創性が高く評価されています。
そして今回、これまで人の生活に寄り添うモノがもつ記憶を記録し、作品化してきた竹中がテーマとするのは、この約2年のコロナ禍における変化と消失です。コロナ禍により閉店した飲食店とその店の歴史が刻まれた家具や食器類。それらを題材にコロナ禍でひっそりと消失していった、私たちの生活の隣にあった風景を、映像用のフィルムに焼きつけ作品化することで、そっとすくい上げます。
本展では、35mm映像用ポジフィルムによるインスタレーションおよび、平面作品を展示予定。是非ご覧ください。

アートフロントギャラリー展示風景2022
光彩の放たれ
天野 一夫(美術批評)
フィルムとは不可解な物質である。われわれのようなフィルムの装填、映写を親しんできた世代は、その不可解さに触れてきた。映像が手に取ることが出来、また音声までがそこに記録されて再生されるメディアなのに、ベースにエマルジョン(乳剤)がのっている透明にしてツルツルした面のみがあり、ほとんど物質感は希薄。しかしブラックボックス化した磁気テープやさらに不明なデジタルメディアにはそんな手に取って見え、アナログに加工しうる可能性などあるはずも無い、非物質的な物質性なのだ。そのようなフィルムを現代の竹中が素材にしていることを私は様々な展観で注視してきた。かつては水彩のようなまさしく光彩的な絵画を制作していた作家は、近年ではますますフィルムを素材としたインスタレーション化に進んでいる。
そのような竹中にフィルムというものが現代の作家にとってはどのようなリアリティを持っているのかを聞いてみたいと思っていた。聞くところによると、かつては現像所での作業のバイトを見つけて働いていたという(現在でもこの日本でのほぼ唯一の現像所に作品を発注しているらしい)。作家がどのような映像経験を持っているのか、私はあえて聞いてはいない。ただその作品にシネフィル的なマニアックな映画への愛も、アウラもあまり感じられない。そこにはフィルムへの物質愛があったとしても、変換しうるひとつの距離感をもって再解釈が遂げられているのである。少なくともフィルムを旧メディアの代表のように扱い、回顧的な視線で見せるノスタルジックな匂いは皆無なのだ。そこにかつての銀幕に棲んだ人影は決して見えてはこない。
今回はコロナ禍で閉店した店舗等(しかしそれは決して作家の思い入れのある店ではないという)の家具・食器などを撮った画像やそれらの影が焼き付けられたフィルムがわれわれを囲いその向こうにガラス越しの街が見えるインスタレーションになるという。フィルム、ガラス面、動く実体という文字通りのレイヤーとしてのリアリティだ。しかし、それだけで鑑賞は済まないのではあるまいか。正確にその像を伝えるのは焦点が合った時に限られ、フィルム自体もひとえに色の無限の変幻となり、そのかたちは影像としてわれわれを照らし返し、または不可視の場にも連れ込むのではないだろうか。実に映像の本来的素材とはフィルムではなく、光と影なのだ。光が透過する中<在、不在>の領域にわれわれは宙吊りになる。その時に、実際の光景が横切る時、その光景はわれわれにどのようなものとして見えてくるのか。
竹中はかつての現像経験に基づくそのフィルムの本質のみを抽出しているように見える。カブリと呼ばれる通常でのミス画像、フィルムに直接感光させて物の影を残し、消えていく現象。様々な光によって流れ浮き出るまさしく光彩は、もののはじめから透過的であり、世界に開かれているのだ。その不可解さを手放すことなく、世界に参入させていくことで、どのような揺らぎが創出するのか、タブローから巣立ったひかりはどのように解き放たれていくのかを私は想像している。

作品のお問い合わせはこちらcontact@artfrontgallery.com

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